6月

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赤の書から抜粋

あなたはこの時代の精神に仕え、深
みの精神を免れることができると思
っている。けれども深みはもはやこ
れ以上ためらわずに、あなたをキリ
ストの密儀に無理やり押し込めるで
あろう。人間が英雄によって救済さ
れるのではなく、自らが一人のキリ
ストとなることがこの密儀に属して
いる。このことはこれまで生きてき
た聖者たちの例が象徴的に教えてく
れる。

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赤の書は心理学者ユングの著作。
第一次大戦を前に精神状態が不安定
になり、黒い表紙のノートに夢やヴ
ィジョンを書き連ねて行く。これを
ユングは黒の書と読んだ。当初、ユ
ングはなぜそれを書いているのか、
理由がわからなかった。しかし、第
一次世界大戦の開戦により、心の不
安定さはその予告であったことを知
る。

1914年から16年をかけ、黒の書を清
書した。中世の写本を彷彿とさせる
装飾を施して。この清書は赤い表紙
の大きな革装のノートに書かれたた
め『赤の書』と呼ばれる。

ユングの死後、銀行の金庫に保管さ
れ、内容を知ることはできなかった
が、2009年、遺族が許可を出し、各
国で出版されていった。

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