9月

22

海におしっこ

広告会社に勤務していたとき、久米島へポスターの撮影に行った。
美人でキュートなキャンペーン・ガールがモデル。
スポンサーとカメラマンとその助手と衣装担当とヘアメークとコーディネーターと一緒に久米島から三十分ほど船で行った小さな島で撮影した。
海は驚くほど透明で、走るボートから10mほど下の岩がそのまま見れる。
ほかの船が通りかかると、海の底と船が一緒に見えて、まるで空中に浮いているかのようだ。
着いた島は木が一本も生えてなく、細長い楕円形。
真ん中が少し高くなっていて、そこに立つと島がすべて見渡せた。
周囲を歩くと数分で元の場所に戻れるような小さな島。
島の真ん中にビーチパラソルを立て、モデルさんの衣装やメークを整えた。
その島で撮影すべき衣装が何着かあった。
それらがすべて終わる前に曇ってしまった。
太陽が出てくるのを待つことになった。
スポンサーと僕は海に入った。
その島に行くのにみんな水着で行くことになっていた。
こんなことなら水中マスクも持ってくればよかった。
海に入ってもマスクがないので魚は見にくい。
すぐに飽きて海から出た。
島の真ん中でしばらく待ったがなかなか太陽が出てこない。
用を足したくなりコーディネーターにどうすればいいか聞いた。
「海でするしかないですね」
仕方ないので海辺に降りた。
島の真ん中の小高いところからキャンペーン・ガールがなんとはなしにこちらを見ている。
立ちションすると丸見えだ。
仕方ないので海に入っておしっこする。
しかし、普段と環境が違うせいかなかなか出てこない。
やっとなんとか出して、知らん顔で小高いところに戻った。
そこからおしっこしたところを見ると心臓が縮み上がった。
きらきらと輝いている海の表面が、おしっこしたところから沖へと向かって乱れた帯のようにゆらゆらと、わずかに輝きを変えている。
おしっこしたのがバレバレだ。
でも、注意して見なければただの海の表面にしか見えない。
あんなに遠くまで帯が届くとは思わなかった。
気づいたかなと思ってドキドキしていると、キャンペーン・ガールがすっと立ち「私も」と言い残して浜に降りていった。
しばらくして、乱れた帯の二本目が、沖に向かって流れて行った。

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