蟻地獄
幼い頃、近所の農家の庭にあった物置の壁沿いに、蟻地獄がいた。
はじめて見た蟻地獄に興奮した。
蟻をつかまえてきては蟻地獄の巣に落としてみる。
逆円錐形の蟻地獄の巣は、蟻が入ると登れない。
上がろうとして足掻けば足掻くほど下に落ちていく。
円錐形の中心に届くちょっと前で、蟻地獄が砂をパッとかける。
蟻はそれでももがいて上がろうとするが、二度三度と同じことを繰り返して、力つきて巣の中心にいる蟻地獄に捉えられる。
その様を見て興奮し、もう一度と別の蟻をつかまえてくる。
気がつくと、僕たちは蚊にたくさん刺されていた。