あんぱんの話
近所にあるパン屋さん「アンジェリーナ」のあんぱんには、桜の塩漬けが載せてある。
相方はひとつしかないあんぱんをふたつに割って、両手に持ち、「どっちがいい?」と聞く。
僕から見て左側のあんぱんが不自然に揺れている。
左を選べということか?
そこで反対を選ぶ。
「じゃあ右」
「えっ? こっち?」と言って、僕から見て右を振る。
「そう」
「えーっ」と不満げな顔をして、お皿に右のあんぱんを置く。
そして、そこに乗っていた桜の塩漬けを二つにちぎって分けた。
相方は桜の塩漬けが好きなのだ。
「黙ってそっちから見て右側を出せばいいじゃないか」
「やだ」
「なんで?」
「こういうやりとりが面白いから」