7月

7

騎手がチラッと見るように

昔、イェイツのお墓に行ったことがある。
スライゴーのドラムクリフ教会にある。
墓石に詩が彫られている。
とても印象的だった。
Cast a cold eye on life. on death.
Horseman pass by !

7月

5

Jeff Peterson のギター

ホノルルのはずれを散歩していたとき、疲れたのでカフェにでも入ろうと思い、知らないホテル内のアーケードに入った。
そこにはCDショップがあり、ふらっと入るとギターの素敵な音が聞こえてきた。
きっとハワイアン・スラッキーギターだろう。
ハワイにはスラッキーギターの名手が何人かいる。
前にハワイに行ったとき、スラッキーギターの名手によるベスト盤のようなアルバムを買っていた。
店員に「この曲は誰のなんていう曲ですか?」と質問すると、カウンターに立てかけてあったCDケースを指差して「それだよ」という。
オレンジ色の丘の先に霧に包まれた暗い森が写っている抽象的な表紙だった。
「有名なひとなんですか?」
「いや、新人だよ。いい音だすよねぇ」
そこではじめて Jeff Peterson を知った。
飾られていた「Slak key Guitar ~ The Artistotry of Jeff Peterson」を買った。
以来、何枚かのアルバムを買い、朝によく聞く。

7月

4

iMacの音

新しいiMacが到着した。
予定より二週間早かった。
正面から見ると10年前のiMacとほとんど何も変わらない。
デザインは10年前にほぼ完成されていた。
一番大きく変わったのは音だ。
かつてのiMacだと、スピーカーを繋がないと「音楽がどうも」という感じだったが、新しいマックはスピーカーを繋げなくてもある程度聴ける音になってきた。
アルミでできたコンピューター全体がスピーカーになっている。

7月

3

埴谷雄高の『虚空』

大学生の頃、古本屋に行くと必ず目にする本があった。
それは埴谷雄高の『死霊』。
当時は名前の読み方すら知らず、いったいどんな本なのか極めて謎だったので、読むだけ読んでみようと買ってみた。
当時の『死霊』は五章までしかなかった。
その時点ではまだ未完であることも知らなかった。
とにかく読んだが、何が何だかよくわからない。
この作品の何が面白いのか?
何十年も本棚に飾られた状態だった。
それを再び読む気になった。
安藤礼二の『光の曼陀羅』のおかげ。
九章で絶筆になり、全三巻の文庫が出ている。
埴谷雄高はいくつかの短編と『死霊』くらいしか作品がないと言われている。
まずは短編集『虚空』を読んでいる。

7月

2

香港ペニンシュラの弦楽合奏

ニュースを見ていて大学生の頃の中国旅行を思い出した。
ビザを安く買うためにまず香港に行った。
そこで、当時世界で一番いいといわれていたペニンシュラ・ホテルに行ってお茶をした。
一階のカフェでお茶をしていると、二階のバルコニーから生演奏の弦楽合奏が聞こえてきた。
いつか平和になったらまたペニンシュラで会おう。

7月

1

不快の区別

気持ちいいものについて4184もの区別を付けてきた。
そうしていると不思議なことが起きてくる。
「不快」のなかに気持ちよさを見つけるようになる。
または、「不快」と思い込んでいた感覚に、別の解釈を許すようになる。
それはいったいどういうことなのか、説明しようとしてもうまく説明できない。
あえて説明するなら、子供の頃に嫌いだった食べ物を大人になって好きになってしまうような感覚とでも言おうか。
「気持ちいいもの」について区別を与えれば与えるほど、「不快なもの」にも区別を与えていたのかもしれない。
それは自分が意図せずにも、心のどこかでそういう自動的な作業が発動していたのかも。
たとえば、気持ちいいものを表現すればするほど、太極図のようにどこかに不快な感覚がついてきて、そこに意図せぬ区別をつけていたのかも。
気持ちいいものを書き続けると、ときどきその作業が嫌になることがある。
それが陰の極まったとき。
それを過ぎて陽が現れるのをじっと待つ。
「気持ちいいもの」を書くように「不快なもの」も書ける気がする。
「不快なもの」を書き続けると、きっと「気持ちいいもの」にたどり着くのだろう。