2月

26

憂国

三島由紀夫の小説はいままでに何冊か読んで来たが、『憂国』は心に刺さる作品だ。
高校生から大学生の頃に『仮面の告白』『愛の渇き』『美徳のよろめき』『午後の曳航』『音楽』などを読んだが、学生の僕にはあまりピンと来なかった。
数年前に『美しい星』を読んで、三島の作品としてははじめて面白いと思った。
若い頃、『憂国』だけは読みたくなかった。
危険な小説に思えた。
いまが読むべきときだと思い読んだ。
面白いというよりは、凄いという感じだ。
生々しい。
いたるところで匂いを感じた。
同じ本に『英霊の聲』と『十日の菊』が入っているが、『英霊の聲』も凄かった。
『十日の菊』は少し休んでから読もうと思う。
現代ではあまり使われない言葉が文章の密度を高くしていた。
特に『憂国』では軍隊にいるというのは、こういう人とのつながりかたになるんだろうなと思う。
戦って仲間を殺すくらいなら、切腹して果てるという連帯感。
僕にはとてもできない。
というか、そのように追いつめられた状況をいまの世の中に生み出すべきではないと思う。
三島が切腹した一週間ほどあとで、市ヶ谷駐屯地前を家族みんなが乗った車で通った。
父がそのとき何か言ったが、あまりにも強烈だったので「強烈であった」ということ以外忘れてしまった。
それから何年もあと、フォーカスの創刊号に三島の頭が掲載されていた。
この話のどこが気持ちいいのかと聞かれそうだが、『憂国』が見事だった。

8月

9

美しい星

三島由紀夫の小説。
ある一家が突然、
「自分たちは宇宙人だ」と悟る。
父は火星人、母は木星人、
兄は水星人、妹は金星人。
それぞれの星から来たから
みんな意見が違う。
通じているようで通じていない。
普通の家庭に起こることでも
宇宙人の目から見ると
ちょっと違って見える。
いろんな観点を持たされる
不思議な小説。
一家はみんな地球の平和を夢見るが
なかなかうまくいかない。
地球人が考えるとすると
違和感が生まれるが、
異星人だから人間のことを
どう思っていても不自然ではない。