水の記憶

今朝起きて顔を洗う手のひらからこぼれ落ちる、水の記憶
 
横殴りに降る雨
頬をたたき、腕をたたき、膝をたたき、すねをたたき、
かばんをびしょびしょにする、水の記憶
 
芝生に向かいホースでまく水
風に水滴が舞い上がり、いつしか自分も濡れていく
笑い声とともに手元にあらわれる虹、水の記憶
 
釣り糸をたらし、せせらぎを聞き、黙って水面を見る
とんぼがダンスを踊る
ステップとともにひろがる輪、水の記憶
 
クラスメートがプールへ飛び込む
夏の陽射しに歓声があがる
遠くまではねたしぶき、水の記憶
 
ジュースがほしいとこねた駄々
母の手にはひとつのコップ
無味無臭の透明な液体、水の記憶
 
つまづいて転んだ水たまり
顔をあげれば口に泥
きれいにしなきゃと洗われる、水の記憶
 
水の記憶
 
深い眠りと安息の場所
柔らかなビートが聞こえる
浸りきった深い心
目覚めるのか、遠い魂
暗くて静かで遥かな時間
永遠の循環
指を口にくわえる
チュバチュバと口を吸う
原始への回帰
水の記憶
 
水の記憶
海面にふりそそぐ雨
踊り続ける水滴
歌い続ける雨滴、波頭、風の音
 
水の記憶
森を流れる川
岩を削り、土をさらい、命を流す
いつかそそぎ込む、平野へと
 
水の記憶
田畑を育む静かな流れ
命に等しく力を与え、
いつかその場を去っていく
 
水の記憶
 
魂は、水の記憶と旅をする
昨日のこと、一年前の偶然、十年前の出来事、生まれた頃、
生まれる前、人間が現れた時代、動物が生を謳歌したとき、生命が息づいたとき
魂のそこには水の記憶
 
水の記憶、未来への指標
水の記憶、もっとも懐かしいもの
水の記憶、永遠の旅
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この詩「水の記憶」は、1999年にLOVE NOTESのヒロ川島さん、現在デザイン会社を経営している布施真人さん、広告会社勤務の小柳晶嗣さんと一緒にプロデュースした「cosmos+」というパーティーで発表したものです。LOVE NOTESに伴奏してもらい朗読しました。
2005年には東放学園高等専修学校の文化祭で、IMONESの山下太郎さんgnuのベーシスト種石幸也さん、ドラマーの山本直樹さんをバックに朗読しました。