ザ・ムーン 〜 記憶に照らされた心の震え

「ザ・ムーン(原題 IN THE SHADOW OF THE MOON)」を観た。アポロ計画の宇宙飛行士のインタビューとNASAの映像で構成されたドキュメンタリーだ。とてもいい作品だった。この作品を見て、僕が特に感動したことは二点ある。

アポロ8号は当初地球を周回する予定だった。しかし、ソ連が新型のロケットを開発していることをCIAが察知し、急遽月周回へと予定が変更される。これによってアポロ8号がはじめて月の裏側や、月の地平線から登る地球の写真などを撮影した。アポロ8号が月の周回中にクリスマスになり、世界に向けて中継された映像に、宇宙飛行士が聖書の創世記を読む。このときの音声を聞いて鳥肌が立った。その音声は僕が好きで何度も聞いていた音楽にサンプリングされて使われていたのだ。使われていたのはマイク・オールドフィールドの「The Songs of Distant Earth」。

アーサー・C・クラークの「遙かなる地球の歌」にインスパイアされて作られたこの曲は、出だしの部分で音楽にかぶせて無線で伝えられた「創世記」が聞こえてくる。この部分がとても好きで、かつて友達とCOSMOS+というパーティーをしたときにはテーマ曲にしていた。それがアポロ8号から世界中に流れたものだとは知らなかった。遠距離を飛んだ電波のノイズと、あまりいいスピーカーを通したのではないようなシャリシャリした音質で、すぐに「The Songs of Distant Earth」と同じものだとわかった。もちろん読む間合いも、声も同じ。マイク・オールドフィールドはその曲の出だしにふさわしいと考え、そこにサンプリングしたのだろう。10年ほど前のその曲の思い出と、遙か昔、僕がまだ七歳の頃の出来事がつながり、あの無線の声が僕の人生に共鳴し心が震えた。

もうひとつ感動したのは本編には出て来ないDVDの特典映像だ。

“ザ・ムーン 〜 記憶に照らされた心の震え” の続きを読む

水の記憶

今朝起きて顔を洗う手のひらからこぼれ落ちる、水の記憶
 
横殴りに降る雨
頬をたたき、腕をたたき、膝をたたき、すねをたたき、
かばんをびしょびしょにする、水の記憶
 
芝生に向かいホースでまく水
風に水滴が舞い上がり、いつしか自分も濡れていく
笑い声とともに手元にあらわれる虹、水の記憶
 
釣り糸をたらし、せせらぎを聞き、黙って水面を見る
とんぼがダンスを踊る
ステップとともにひろがる輪、水の記憶
 
クラスメートがプールへ飛び込む
夏の陽射しに歓声があがる
遠くまではねたしぶき、水の記憶
 
ジュースがほしいとこねた駄々
母の手にはひとつのコップ
無味無臭の透明な液体、水の記憶
 
つまづいて転んだ水たまり
顔をあげれば口に泥
きれいにしなきゃと洗われる、水の記憶
 
水の記憶
 
深い眠りと安息の場所
柔らかなビートが聞こえる
浸りきった深い心
目覚めるのか、遠い魂
暗くて静かで遥かな時間
永遠の循環
指を口にくわえる
チュバチュバと口を吸う
原始への回帰
水の記憶
 
水の記憶
海面にふりそそぐ雨
踊り続ける水滴
歌い続ける雨滴、波頭、風の音
 
水の記憶
森を流れる川
岩を削り、土をさらい、命を流す
いつかそそぎ込む、平野へと
 
水の記憶
田畑を育む静かな流れ
命に等しく力を与え、
いつかその場を去っていく
 
水の記憶
 
魂は、水の記憶と旅をする
昨日のこと、一年前の偶然、十年前の出来事、生まれた頃、
生まれる前、人間が現れた時代、動物が生を謳歌したとき、生命が息づいたとき
魂のそこには水の記憶
 
水の記憶、未来への指標
水の記憶、もっとも懐かしいもの
水の記憶、永遠の旅
——–
この詩「水の記憶」は、1999年にLOVE NOTESのヒロ川島さん、現在デザイン会社を経営している布施真人さん、広告会社勤務の小柳晶嗣さんと一緒にプロデュースした「cosmos+」というパーティーで発表したものです。LOVE NOTESに伴奏してもらい朗読しました。
2005年には東放学園高等専修学校の文化祭で、IMONESの山下太郎さんgnuのベーシスト種石幸也さん、ドラマーの山本直樹さんをバックに朗読しました。

CosMos

世の中にはわからないことがたくさんある。それをどうにか理論づけて体系立てていくのが科学だ。科学は世の中を説明するための言葉でありながら、時々逆立ちする。理論で事実を説明しようとすることだ。

もとはと言えば事実を体系立てるために作った理論で、事実すべてを説明しようとする。すると時々説明できない事実が現れる。理論を一生懸命追ってきた人はそのとき理論を優先し、事実を見なくなる。裸の王様を笑った子どものように、事実と理論が違うことを指摘すると、理論を大切にしてきた人たちは「事実が間違いだ」と言い出す。

よくやり玉に挙げられることのひとつが「水の結晶」だ。江本勝さんが「水からの伝言」という本にまとめたこと。水の入った器に言葉を書いたり、言葉の書かれた紙の上に水を置いておくと、言葉の質や内容によって、冷凍してできる結晶の形が異なるという内容だ。これが事実か否か、僕にはよくわからない。普通に考えれば、あり得ない話しだ。だけど実際に実験して確かめたわけでもないのでなんとも言えない。本当なら面白いし、嘘なら馬鹿げたことするなと思うし、ファンタジーなら素敵な想像力を持っているなということだ。今回その実験を見せてもらえることになった。しかも、世界賢人会議「ブダペストクラブ」の創設者、アーヴィン・ラズロ博士と一緒に。 ラズロ博士に会うために最近出版されたばかりの「CosMos」を読んでいった。

その席に招いてくださったのが七田チャイルドアカデミーで知り合った飛谷ユミ子さんだ。おかげさまで水の結晶写真を撮影するブースも見せていただいた。

オフィスでお目にかかった江本さんは、世界中で水の結晶について講演している。すると、海外の研究者のなかには追実験をしてくれる人もいるそうだ。江本氏は言った。

「日本の科学者は何も調べないで嘘だというんだよ。困っちゃってさ」

その場にイタリアから来ていたチトロ博士も同席なさった。チトロ博士はドーパミンの波動を水に転写して、その水でパーキンソン病を治癒したそうで、転写された水を結晶にするとどうなるかを調べに来ていた。そう説明されても僕には意味がわからなかったが、あとで丁寧に説明してもらった。

しばらくしてラズロ博士がいらした。ラズロ博士はシャギ博士というヒーラーを連れてきた。シャギ博士はダウジングを使って人の状態を診る。「誰かからだの調子の悪い人はいませんか?」と言われ、「最近糖尿病だと言われ、薬を飲んでます」と答えたら、診てくれることになった。シャギ博士は僕の背中や頭に手をかざしてダウジングの振れを見る。するとその状態を見て僕の左手の人差し指の先と、小指の付け根に何か印のような物を書いてくれた。ダウジングの振り子の振れ方で印が決まるそうだ。ホワイトボードに右下の写真のように図を描いた。振り子が左右に振れるときは横に一本の線、右回りに平たく振れるときは二本の線、右回りに円のように振れるときは三本の線、縦長に右回りの楕円を描くときには四本の線を描くのだそうだ。

さらに今度は「水を調整する」という。紙に名前の頭文字を書くように言われたので書いた。シャギ博士はしばらくダウジングして、その結果をその紙に書いていった。

「この紙の上に、文字や印が書かれていないコップに水を入れて、3分39秒間置き、その後その水を飲みなさい。毎日就寝前に23日間おこなえば完治します」

その場でその紙の上に水を3分39秒置いて飲んだ。シャギ博士がもう一度ダウジングすると、もう肝臓はよくなり、膵臓もさきほどよりはよくなったという。正直言って「まさか」と思った。そんなことで病気が良くなるはずはないと思った。よくなる理由が何もないと思った。

左の写真は書いてもらった紙。

しかし、理屈がわからなくても現実は受け止めなければならない。これで本当に僕の糖尿病が治れば、理屈はどうであろうと効くと言うことだ。もし江戸時代に生きていた人が、現代のコンピューターを見たらまやかしだと思うだろう。同様にその理屈が僕にわからなくても、現実的に治癒すれば文句は言えない。

言われたことが事実かどうか調べようとしたが、残念なことに僕はある晩、水を飲まずに寝てしまった。23日間は続けられなかった。