「おとなのかがく」を見た

映画「おとなのかがく」を見た。感想を書こうと思っていたのだが、なぜか書けない。面白かったのである。しかし感心した点は永岡昌光の技術でもなく、技術流出の事実でもなく、いったい何なんだろう?と思っていた。もちろん永岡昌光の技術に驚いたし、技術流出に心を痛めた。だけど僕のツボはそこではなかった。でも、どこがツボなのかはっきりわからなかった。何かが心に響いたのだが、何が響いたのかわからない。はて?

監督の忠地裕子さんと出会ったのは、小さなバーだった。その片隅で忠地さんは酒を飲みながら不機嫌でいた。美大は出たが有名なアーティストになるわけでもなく、好き勝手に生きているようだったが、満たされてはいなかった。何か作品を作りたいと思っていたようだが、作ったとして何になろうか? 余程インパクトのある作品を作らない限り、それは消費されるだけだ。無名のライターである僕にとってその痛さは自分の痛さでもあった。その彼女がドキュメンタリー映画の監督としてデビューした。

切々と撮影された映像は、冒頭のテオ・ヤンセンのストランド・ビーストのシーン以外はとても地味なモノばかりだ。細かい作業をする手先。狭い部屋での作業。台湾や中国の工場。それを見ているときは侘びしいとか寂しいとか思わなかった。だけど心のどこかにその種が宿った。その種はホコリのように小さくて、心の表面をようく撫でないと見つけられなかった。ようく撫でて見つけたざらざらは、しばらくなんのざらざらなのかわからなかった。そして、そこにあるのはささやかだけど、豊かさだと知った。

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櫻山八幡宮の式年大祭

2011年5月1日と2日に、水無神社の例祭に行ったことはこちらに書いた。そこで、土地の古老に30年に一度のお祭りが櫻山八幡宮でおこなわれると聞き、2日で帰るつもりだったが、一日延ばしてそのお祭りを見ることにした。なにしろ30年に一度のお祭りだ。そのことを当時書こうと思っていたのだが、忙しさにまぎれて書き忘れていた。3年も経ってしまったが、そのときの概略をここに記しておく。

2日に高山駅と櫻山八幡宮のあいだを流れる川沿いにある宿を取った。そこは宿主のよれば森村誠一氏の定宿なのだそうだ。まずは2日のうちに近辺を探索。

翌日から始まる祭の準備がいろいろとなされていました。まずは参道に奉納灯籠が並んでいました。

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特定秘密保護法案について僕が思うこと

特定秘密保護法案が2013年12月6日に成立し、同年同月13日に公布された。1年以内に施行されるはずだ。僕はこの法案について賛成か反対かとても微妙だ。この法案をどのように利用するかが大切だから。もし、日本人がみんな互いに信頼し合える間柄ならば、たいして問題にはならない。信頼し合えない間柄なら大変問題だと言うことだ。さて、どちらの立場に立つのか? このことに関して考えるために、少し別のことを考えてから、この問題に戻ってこようと思う。

20年近く前、僕はケニアに行った。一頭の象に会うために。その象の名前はエレナ。ドキュメンタリー映画『地球交響曲(ガイヤシンフォニー)第一番』に登場する象だ。僕はこの象を育てたシェルドリック動物孤児院を舞台として、『ひとりぼっちのケティ』という少女マンガの原作を作った。ストーリーの概要は、動物孤児院の存在を知った日本の女の子キッコが、子象の養い親となり、その子象ケティに会いに行く。そこで密猟の現実に巻き込まれながら、動物を愛するとはどういうことかを学んでいく。このとき、現地の象の密猟について詳しく調べた。そこで僕自身がとても大切なことを学ぶことになった。それは歴史というものの成り立ちだ。

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