創出版による「The Cove上映会とシンポジウム」

2010年6月9日におこなわれた、創出版による「The Cove上映会とシンポジウム」に行ってきました。このシンポジウムの直前に「ザ・コーヴ」を上映予定していた映画館二館が上映中止を発表したため噂を呼び、大変な盛況になりました。

まずは日本版の「ザ・コーヴ」が上映されました。ところどころ「?」と思ったところがありました。しかし、それは映画のなかの一瞬のことなので明確にココとなかなか指摘できないのですが、字幕が違うのか、画像を抜いたのか、いままで観てきた「The Cove」とはいくつか少し印象の違うところがありました。それらは僕の思い違いかもしれませんが、明確に指摘できるところはふたつありました。ひとつは、映画がほぼ終わるときに観客に向けて「行動を起こそう」的なことが伝えられていたのですが、それが抜けていました。それから、エンドタイトルが終わって映画が終わる直前に、クスッと笑えるようなシーンが挿入されていたのですが、それがカットされていました。太地町の警察官とおぼしき年配の人にスタッフがクジラの形をした風船を見せるシーンなのですが、多分その警官の顔をアップにして笑顔がそこに出て来ないとこの笑いの理由がわからないのでカットしたのでしょう。とにかく、日本人の表情はことごとくモザイクがかけられていました。かえってモザイクの方が不気味に感じます。すりガラスのようなモザイクだったので、うっすらと表情というか雰囲気が伝わってくるのです。

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異文化のイノベーション〜未来を発見するデザイン

5/10にアカデミーヒルズでグエナエル・ニコラ氏の講演「異文化のイノベーション〜未来を発見するデザイン」を聞いた。とても素晴らしかったので内容をまとめる。ただし、ニコラ氏はかなり日本語をはしょるので、僕がかってに補足している。さらに、録音したわけではなく、メモに頼っている。ご本人が言いたかったことと少し違う部分があるかもしれないが、ご容赦を。

日本はスパイラル

ヨーロッパにいると、日本がどういうところかよくわからない。アメリカやヨーロッパの街なら何枚かの写真を見ればなんとなく雰囲気がわかるけど、東京の写真は何枚見ても全体的なイメージが浮かばなかった。そしてそれがなぜなのかがわからなかった。日本には神社のような場所もあればとてもモダンな場所もある。それらが同じ場所にあるというのが理解できなかった。そして、なぜか一緒にあるのに未来を感じた。その「感じ」とはいったい何なのかを確かめるために1990年はじめて日本に来た。

しばらく滞在してわかってきたのは、日本がヨーロッパと違うのは単にデザインが違うからだけではなく、世界観が違うと言うことだった。

ヨーロッパは革命が好き。一度全部壊してから新しいものを作る。一方日本はスパイラルに新しいものを作っていく。あれかこれかとチョイスするのではなく、以前あったものを土台にして、その上に新しいものを積み重ねる。だから東京にいると過去・現在・未来がすべて見える。

ヨーロッパでルイ王朝の頃の服を着ていたら変な人と思われるが、日本で着物を着ていても違和感を感じない。つまり、文化のレイヤーがスパイラルなのだ。

江戸城のお堀とビル
江戸城のお堀とビル

ヨーロッパにいた頃、坂井直樹氏にあこがれて一緒に仕事がしたいと思っていた。日本に来てはじめて一緒にした仕事は仏壇のデザインだった。この仕事をして時間をデザインすると言うことを学んだ。ヨーロッパでは時間のデザインなど考えもしなかった。

仏壇は現在でも使われている。しかし、たとえばモダンなデザインのマンションに普通の仏壇が置かれると、少し違和感が生まれる。モダンなインテリアの中に仏壇があることを考えて欲しい。多くの家庭ではその違和感を隠すために、モダンな部屋に仏壇があったら、その部屋には他人を招き入れないだろう。そこで、他人が入ってきても違和感が生まれない仏壇を作った。外観はモダンな家具とあまり変わらない、違和感の生まれないデザインにした。しかし、仏壇の扉を開いていくと、そこには仏壇特有の仏教的世界が現れるようにデザインした。

仏壇の写真

日本人は「侘び」「寂び」が好きだが、それに加えて「好き」なことが好きだ。きれいなものが好きだ。(数寄屋造りの数寄と言葉がかけてあるのかもしれない) 日本人が好きなものは一見してシンプルだけど、よく見ると、よく知ると、複雑であることが好き(数寄)だ。特に日本のホスピタリティーは単純に見えるが複雑で、それをただ単純にやってしまうと日本人はそれを好まない。

スイスで「SENSAI」というブランドのSPAを作った。

写真はこちら。

完成していくにしたがって、作っている人たちが言葉を失っていくのがわかった。できてきたものを見て「うーん」とうなり、「いいんじゃない」と感じる。それ以上言いようがない。この状態になったとき、日本的というか、日本人が好む「好き(数寄)」な状態になったと言える。

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地球の未来への対話〜仏教と科学の共鳴

2009年11月1日(日)午後1時から『地球の未来への対話』を聞きに行った。以下に対話の内容を記す。ただし、会場には録音機材などを持ち込むことはできないとのことだったので、すべてメモ書きしたものをここに書き直す。そのためにかなり内容が抜けているし、メモが不完全な箇所はあとで補ったので、多少の間違いがあるかもしれない。ご容赦願いたい。

司会:尾中謙文:

日本の人たちは豊かさを指針に働いてきた。しかし、それが窮まり自殺者が年間3万人となり、無気力や貧困が蔓延している。コンピューターがたくさんの情報を与えてくれるようになったが、忙しすぎて心が不安定な人が増えたように感じる。そろそろ心の内と外の両方を考えるべき時代に差しかかっていると思う。そしてそれは私たちが失った大切な物事を思い出し、気づくべき機会でもある。ぜひこれからおこなわれる対話を契機として、幸せをつかむチャンスとして欲しいと思います。

今日は四つのテーマについて考えていきます。それぞれのテーマをパネリストひとりずつに受け持ってもらいます。四つのテーマは「地球」「環境」「生命」「心」です。

では、まずは「地球」のテーマで竹村真一さんからお話しを始めて下さい。

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