孫崎享氏の講演概要

2015年8月17日(月)に国分寺駅そばにあるカフェスローで、孫崎享氏の講演会がおこなわれた。それに参加して聞いた概要をここに記す。メモ書きによるものなので、内容は完璧ではないし、ニュアンスも狂っているかもしれない。ご寛宥を。

講演が始まる前に参加者のひとりが質問をした。
「対米従属について聞かせて下さい」
孫崎氏は「今日の話にはあまり出て来ない部分があるのでお話しましょう」と始めた。

『戦後史の正体』にも書きましたけど、アメリカ追従の政治家は安泰だが、少しでも抵抗しようとすると必ずつぶされる。田中角栄しかり、竹下登しかり。しかし、この話をすると僕のこと陰謀論者というひとがいる。特に池田信夫という人。でも、考えてみて下さい。陰謀論なんかじゃない、事実です。

戦後、うまくやったのはドイツ。ドイツは戦後、四つに分割されてなくなった。ドイツが統一されるとまたおかしくなるかもしれないから分割しておこうという考えがあった。そしてもう二度とドイツが脅威にならないように近隣諸国に悪影響を与えないようにはっきりさせる必要があった。そのおかげで今のドイツがある。大切なのは他の国の脅威にならないということ。

日本では終戦というと8月15日のことだけど、世界的には9月2日のポツダム宣言の受諾によってなされたことになっている。このとき降伏文書に合意し、連合国の言うことはなんでも聞くと約束した。だから国の始まりからして「アメリカの言うことはなんでも聞きます」と言った。その象徴が吉田茂であり、昭和天皇であった。

先日朝まで生テレビに出たときに言ったことだけど、天皇制を維持することと、昭和天皇が責任を取ることは別。昭和天皇はやめるべきだったと言いました。やめなかったためにどうなったかというと、昭和天皇は戦争開始に責任を持っていたから、場合によっては絞首刑になってもおかしくない状況だった。だけどアメリカに追従することで生きながらえた。そこで彼は徹底的に米国追従になった。私たちはあまり知らないけど、戦後の歴史の中で、対米従属をやっていた人間の一人が昭和天皇。それをいろんな局面で表現していた。たとえば、鳩山一郎内閣のときに重光葵は米軍には撤退してもらいたいというが、昭和天皇はあくまでも拒否していた。このようにして米国追従のシステムがいろんなところにできてしまった。

ここからが正式な講演。

フォーブスという雑誌が毎年発表する世界で一番影響力のある女性は誰だかご存じですか? メルケルです。今年の3月に来日しましたけど、このときにとっても大切なことを言った。何をいったかご存じですか? ご存じのかた手を挙げて下さい。この公演会場にわざわざいらしたような意識の高い人でもあまり知らない。なぜか? あまり報道されなかったからです。

“孫崎享氏の講演概要” の続きを読む

SAVING 10,000 自殺者1万人を救う戦い

web上に公開されている52分のドキュメンタリー映画を見た。『SAVING 10,000 〜 Winning a war on suicide in Japan』監督のレネ・ダイグナンはアイルランド人。なぜこのようなドキュメンタリーを撮影したのか、その動機についても映画のなかで語られる。

日本の自殺率の高さをいろんな観点からインタビューして探っていく。自殺なんて自分とは関係ないと考え、どうやったら楽しく生きていけるかを考えているような人は特に見たいとは思わない映画かもしれない。とても暗い内容なので見ていると鬱々としてくる。

日本人はあまり暗いことを語りたがらないので、このような内容についてあまり話し合う場がない。職場では話す時間がないだろうし、帰りがけに飲む場所でこんな話をしたら嫌われそうだ。だから、無関心を決め込む。それが実は問題なのかもしれない。本当に困ったとき、相談すべき相手がいない。

日本は本当のことが言えない状況にどんどん追い込まれつつある。

「左翼のクソども」とtwitterに書いたという理由で水野靖久参事官が処分されるようだが、そう言いたくなる気もわからないではない。「復興のために頑張っている」というのは、立場によってすることが全く違うからだ。そのことの概要はここに書いた。水野参事官の書いていることを読むと、言えることと言えないことのギリギリのところを書いているように僕には思える。政府はなんとしても日本全体を守りたい。一方で、左翼と呼ばれた人たちは、恐らく個人を守ることを必死に訴えていたのではないかと思う。そうだとすれば、左翼と呼ばれた人たちの言いたいこともわかる気がする。本当は両者のあいだで丁寧な会話が必要なのだろうが、そんな時間はないことにされる。すでに福島の対応は遅いと言われて大変なのだ。その板挟みに遭ってしまう官僚達は仕方なく言葉が荒れてしまうのだろう。

“SAVING 10,000 自殺者1万人を救う戦い” の続きを読む