息をしないほうが楽という不思議

2、3週間前に足を痛めてから泳ぐようにしている。平泳ぎならいくらでも泳げるのだが、クロールはあまり長い距離を泳げない。腕の力が弱いことと、呼吸が苦しくなることが理由だ。

50mも泳ぐとどうしても息が苦しいので休んでしまう。平泳ぎならゆっくりと泳いで息継ぎしてもあまり苦しくないのになぜだろうといろいろと考えた。そこで泳ぎながらいろいろと試してみる。まず、ゆっくり泳いでみることにした。平泳ぎならゆっくりと泳げるのだが、クロールでゆっくりは泳げない。プールで泳いでいるほかのひとたちを見るとクロールでもゆっくり泳いでいる人たちがいる。なぜあれができないんだろう?

一緒に泳いでいた年配の男性が、ゆっくりと泳ぐのが上手だったので真似してみた。その人はふた搔きに一度ブレスをしていた。そこで同じようにやってみた。するとどうだろう、前より苦しい。なんでだ?と思った。そこではじめてわかった。僕は息を吸いすぎていたのだ。息を吐ききる前に次の息を吸おうとするから苦しいのだった。こんな簡単なことに気がつかなかった。クロールをしているときはどこかあわてていたのだ。そこで、次は以前と同様、4回搔くうちに1回ブレスするようにしてみた。このとき、以前よりも多く息を吐くようにした。すると少し楽になった。しかし、25m以上泳ぐとやはり苦しくなる。そこで今度は6回搔くうちに1回だけ息をしてみた。すると、これがとても楽なのだ。息を吐ききっているので息を吸うのが気持ちいい。しかし、25mを過ぎる頃から息が足りなくなるので、4回に1回と6回に1回を混ぜるようにする。それで50mは前より楽になった。

前より楽になるのと同時に落ち着いたせいか、泳いでいるときの感覚もよく観察できるようになった。クロールで泳ぐとき、前を見るより下を見ていた方がひとかきで長く進むことがわかった。きっと頭を上げていると体全体が水面に平行ではなくなり、抵抗になるのだろう。下を見る体勢を保つようにすると、今度は足の掻き方でスピードが変わることにも気づいた。足の付け根から足全体で搔くことで泳ぎが速くなる。しかし、これを持続するためには力が必要だ。疲れるとできなくなる。

疲れたら、搔く力を抜けばいいのだと、頭では理解しているのだが、搔かないと沈むのではないかという恐怖心がそれを妨げている。搔かなくても時々息継ぎさえして浮かんでいればそれで溺れることはない。しかし、腕が疲れて進まなくなるとどうしてもあわててしまう。それで一生懸命搔こうとして息が足りなくなる。頭で理解することとからだが覚えることの違いが身に染みた。

クロールで泳ぐとき、いまは手で綱をたぐり寄せるようにして泳いでいる感じがする。しかし、手の力が弱いから、長い距離は進めない。疲れるとからだのバランスが崩れて、イメージ通りには泳げなくなっていく。慣れていくうちに力がつくのだろうけど、それまではちょっと我慢しなければならないようだ。それとも、もっとたくさんの気づきがあって、もっと楽になっていくのか? 少しずつ泳ぐことが楽しくなってきた。

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