自然エネルギー財団設立イベント〜アジアスーパーグリッド構想

9月12日におこなわれた自然エネルギー財団設立イベントに参加してきました。その内容を簡単にまとめます。

財団設立者 孫正義 エネルギーのパラダイムシフトへ

ずっと電力にはあまり興味がない門外漢だった。しかし、311で様相が変わる。原発をどうにかしなければならないと感じるようになった。そのためには原発は駄目だといくら言っても、言っただけでは何も変わらない。具体的なビジョンを示す必要があると感じた。

1970年代にオイルショックが起こる。それまでは石油の価格はあまり気にすることがなかったが、それ以来エネルギーの価格が大変問題になる。そこで日本は原発を持つことによって電力をまかなおうとする。石油から原子力への転換が、日本にとってのエネルギーの第一のパラダイムシフトだった。過去40年間発電量は経済成長に伴い増加した。

従来の電気事業制度の特徴は、電気料金を総括原価方式で決めて来たことにある。これは電力インフラを整備するためにはいい方法だったが、原価に報酬を足して電気料金としてよかったために、電気を使えば使うほど電力会社は潤うためにどんどん電気を使うようになっていった。しかしその結果、電気料金は高くなり、地域ごとに電力の融通をし合うことがなくなり、硬直化していったため、抜本的な見直しが必要だと思われる。

1997年に京都議定書が発表され、2002年にエネルギー政策基本法が決まり、2003年から2010年にかけてエネルギー基本計画が改定されていった。その結果、2030年には発電に占める原発の比率は53%にまで上げることが決まった。

しかし、2011年に東日本大震災と原発事故が起こり、第二のエネルギー・パラダイムシフトを起こす必要が生まれた。野田総理は「原発新設は事実上困難」「寿命が来た原発は廃炉にする」と言っている。(毎日新聞2011.8.29)

世界の原発を調べると、廃炉にするための平均年数は22年である。原発のある地域を調べると、世界的には地震が起こらないところを選んで建設している。ところが日本は地震源の真上に原発を建てている。2030年時点で築40年未満の原発が16基あり、そのうち12基が地震の危険地帯にある。よってそれらを廃炉にすれば、2030年には原発は4基くらいになるはず。原発の新規建設をやめれば2030年には黙っていても数基だけになる。さらに電力全量買取制度が施行されれば次の三つの現象が起きるだろう。

1.原発ミニマム化

2.火力発電依存度低下

3.自然エネルギー本格普及

これらを踏まえ、エネルギー政策に三つの提言をする

1.自然エネルギーの普及拡大

2.電力取引市場の活性化

3.送電インフラの強化

自然エネルギーの利用を拡大するためには「買い取り価格・期間」「送電網への接続義務」「用地の規制緩和」などが並行しない限り理想的には普及しない。しかも自然エネルギーの普及拡大によって価格競争力が向上し、自然エネルギーが輸出産業になるくらいまでにしていかないと目覚ましい発展は望めない。そのために普及拡大への目標設定が必要となる。現状では火力60%、停止中の原発が20%、稼働中の原発が10%、自然エネルギーが10%ほどだが、これを2030年までに自然エネルギーを60%、原子力が数%、残りの30数%を火力というふうにしていくのが理想だ。しかももし自然エネルギーが普及拡大すれば、それはすなわちエネルギーの自給率の向上につながり、国家の安全保障戦略にとってとても好ましい状況をもたらす。

電力は日本では自由化されていると言われており、形式上では2/3が自由化対象である。ところが、自由化された市場のシェアを見れば既存の電力会社が97%、新規参入事業者が2.8%しかなく、実態は寡占状態で競争など起きていない。多くの国では電力会社が何社かあり、それらを自由に選べるのだが、日本ではほとんど選べる状態ではない。たとえば電力会社の年間乗り換え比率は、英国18%、スウェーデン11%、ドイツ5%、フランス34%となっているが、日本はほぼ0%である。

電力取引市場が活性化しない原因は、送電費用が高いことにある。既存の電力会社が発電部門も送電部門も維持しているため、託送料が高くなってしまう。だから電力の自由化を促すためには中立的な立場の送電網が必要となる。そのための解決策として、発電と送電を分離するか、託送料を適正にするかのどちらかしかない。この議論が必要である。

すでに発電と送電を分離している国はたくさんあり、アメリカ、カナダは州ごとに異なるが、スウェーデン、ドイツ、英国、スペイン、中国、インド、フィンランド、デンマーク、イタリア、フランス、韓国、オーストリア、ベルギー、ギリシャ、アイルランド、チェコ、ハンガリー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、オランダなどがそうしている。

たとえばスウェーデンでは、風力発電、太陽光発電、地熱発電、原子力発電、火力発電ごとに一社、または数社の会社が林立し、電気は電力取引所で一括され、数社ある電力小売り会社がそれを消費者に売っている。その際の送電コストは国営の送電会社が一括するが、各地域に配電会社があり、そこが消費者から送電コストの支払いを受ける。こうすることで消費者は自分の電力の値段や質を決めることができる。

自然エネルギーには弱点がある。それは安定した出力を維持できないことだ。風力も太陽光も、風が吹くかどうか、晴れるかどうかによって発電量が変わる。これを理由に北海道電力は2011年8月に安定供給に支障が起きると風力発電を拒否した。風力による発電のピークが必ずしも電気利用のピークとなる訳でもないし、太陽光が降り注ぐのが発電のピークとなるわけでもない。これが地域独占体制の限界である。

しかし、日本は広い。50/60Hzの垣根をはずし、大きな送電ネットワークを作ることでしのげるのではないか? つまりスーパーグリッド(直流高圧送電網)を張り巡らせることで解決できる。

北海道から九州まで直流海底ケーブルを引き、400万kWの直流を流す。直流でおこなうことでロスが少なくできる技術があり、50/60Hzの変換も比較的簡単におこなえるようになる。総距離2,000km、投資額は2兆円規模、年間コストは500億円となり、電力会社の売上高の0.3%にしかすぎない。この構想をジャパンスーパーグリッド構想と名付ける。電力を海底ケーブルで送ることに無理があると言う人がいるが、すでに通信網は世界中を海底ケーブルでつないでいる。電力でできないはずがない。

しかし、これだけでとどめてはもったいない。この計画にはさらにPhase2がある。それは海底ケーブルをさらに延長し、大陸とつなげ、東アジアでの直流高圧送電網を作る。これを「東アジアスーパーグリッド構想」と名付ける。さらに拡張して、インド・中国・シンガポール・タイ・台湾・ロシアなどを結び、総距離36,000kmでこれをPhase3とし、「アジアスーパーグリッド構想」とする。こうすることで時差や気候差によってピークシフトの対策となり、供給を安定化できるし、さらに適正価格を実現できるだろう。

たとえば、ブータンの1kWあたりの電気料は$0.03である。ほかにもデリー$0.1、ムンバイ$0.16、ダッカ$0.05、クアラルンプール$0.09、バンコク$0.12、香港$0.13、シンガポール$0.18、北京$0.12、上海$0.12、マニラ$0.13、台北$0.1、ソウル$0.06となっている。日本はなんと$0.2だ。これらをスーパーグリッドでつなぐことで電力の安定供給と価格の安定化をはかる。実際に中国では広大な国土を生かして超高圧送電網計画を2011年から開始し、2015年には完了する予定だ。総距離40,000km、投資額は7兆円以上になると言われている。ヨーロッパ・アフリカ・中東にはデザーテック構想がある。今年の7月にはスウェーデン、フィンランド、ノルウェー、英国、ポーランド、ドイツ、オランダ、フランスなどが事業者の再編や周波数の統一も考えた上で送電網を作ることを発表した。

ジャパンスーパーグリッドは国家のエネルギー戦略の柱とするべきである。三つの提言が満たされることでエネルギーのパラダイムシフトが起きるだろう。

すでに2002年に制定された「エネルギー政策基本法」に以下のようなことが記されている。「我が国にとって重要なエネルギー資源の開発」「エネルギー市場の自由化などの改革」「国・地方・事業者の相互協力」

これらを踏まえ、「新エネルギー基本計画」(Ver2.0)を策定すべきだ。

過去100年以上、人類はエネルギーを求めて戦争を繰り返して来た。エネルギーをシェアすることで平和な状況を作ることを目指すべきだ。

Energy for Peace in Asia.

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