石巻市長亀山紘氏の講演

9月14日に石巻専修大学でおこなわれた市民講座『藻から石油が取れるの? 市民のためのマリンバイオマスエネルギー理解講座』から、石巻市長である亀山紘さんの講演内容をまとめました。内容はメモと配付資料をまとめたもので、録音録画などをしてないので、大きな違いはないと思いますが、細かい部分では異なる内容が含まれているかも知れません。ご了承ください。

このまとめを読んでいただく前に、亀山さんのことについて少し書きます。亀山さんはネットを調べればわかるのですが、理系の市長です。市長の前職は石巻専修大学理工学部の教授です。しかも研究していた内容は「光触媒技術, 環境浄化触媒, 湿式太陽電池, 人工光合成, バイオマスの利活用, 水素製造, ポルフィリン錯体, アルカンの活性化, 酸素酸化」などであり、ここに述べられた内容はご本人が詳しく知悉している内容について講演なさっています。

亀山さんが震災後一ヶ月ほどで発表したメッセージがこちらにあります。講演内容と合わせてお読みください。

講演タイトル『海に生きる 〜小さな生物に未来を託す』

311震災のよって石巻市震災復興計画は次のように作った。私たちは「最大の被災都市から世界の復興モデル都市石巻」を目指す。

基本理念1 災害に強いまちづくり
震災の教訓を踏まえ、単なる「復旧」にとどまらず、防災基準・防災体制を抜本的に見直し、市民の命を守る災害に強いまちづくりを進める。

基本理念2  産業・経済の再生
農林水産業など再建・復興を促進するとともに、地域資源を活かした産業振興を図る。多様な自然エネルギーを最大限に活かしたエネルギー自立型社会を創る。

基本理念3 絆と協働の共鳴社会
「絆」を大切にするとともに、新たなまちづくりに共に働く仕組みを社会全体に広げ、「共鳴現象」を誘起し、豊かで支えあう地域社会の構築を図る。

これらを実現するために、311から一ヶ月後に以下のような三つの構想を発表した。

1.スマートコミュニティ構想
太陽光発電・風力発電などの新エネルギーの利用を進め、これらの分散電源と、火力・水力などの大規模集中電源との併用ができるように直流給電システムを取り入れ、スマートグリッドを実現する。

2.マリンバイオマスタウン構想
食料以外の生物資源からバイオ燃料をつくる技術を開発し、エネルギー資源の多様化を図る。具体的には微細藻類のプラントを作り、そこから飼料、食料原料などを生産するいっぽう、バイオ燃料の研究をおこない、準備が整い次第製造を開始する。

3.アグリクラスター構想
気候変動対策と同時に食糧危機対策につながる大規模プロジェクトを推進する。具体的には食の安全や食糧自給率を上げることに貢献するよう、太陽光・熱発電/植物工場融合化プロジェクトによって、植物工場の集積化を目指す。

千葉商科大学学長である島田晴雄氏はその著書である『岐路 3.11と日本の再生』で太陽経済都市圏構想を発表している。その際に石巻のことも取り上げていただいた。ポイントは次の三つ。

1.太陽光をはじめ、風力発電、バイオマスなど自然エネルギーを活用した地球と人にやさしい低炭素社会のまちづくり。
2.農商工連携による六次産業育成を核とする地産地消のアグリクラスタ基本構想
3.微細藻類を活用したバイオ産業の育成を核とするマリンバイオマチタウン構想

そして、東北地方がこれからの日本の進むべき道のパイオニアとしてこの地域に太陽経済都市圏を作ることは、歴史を先導する意義があるのではないかと締めくくっていただいた。

これから日本の各地は循環型社会を目指し、地球温暖化や高齢化社会に対応するために「エネルギー自立型社会システム」を実現しなければならない。そのためには次世代エネルギー網の在り方を検討し、災害時のバックアップ電源の確保に努めなければならない。このために石巻での「スマートコミュニティ構想」「マリンバイオマスタウン構想」「アグリクラスター構想」は同時並行的におこなわうべきで、石巻はその先駆けとなる都市になれたらと思う。たとえば、次世代型農業は工場の廃熱を有効に利用することで温度管理をおこない、いっぽうでその不足分やこまかな調整のために新エネルギーを最適活用できるようにデザインする。このとき、サプライチェーン管理がコンピューターでなされることで、コンビニなどがおこなっているように商品がPOS管理され、気候変動やイベントなどによる供給変化にも対応できるように研究開発がなされていくだろう。しかし、これらは安定的に電力が確保できない限り実現しない。いままで通り、火力に頼っていたのでは質の高い堅実な歩みは実現できない。そこで脱石油・バイオマス資源へのシフトが必要になる。低炭素社会の実現には環境と経済の両立、開発と持続可能性の両立が必要であり、そのためには生活の質や豊かさ、そして経済発展を測るための新しい基準が必要となるだろう。その基準を明確にすることで「量と速さ」で繁栄や幸福を測る社会から抜け出ることができるのではないかと期待している。

石油代替エネルギーは現在、バイオ燃料生産が重要課題だと言われている。しかも、それは食料と競合しない原料であることが望ましい。そこで注目されているのが植物プランクトン、微細藻類だ。

微細藻類の種類はたくさんあるが、そのなかで油を作るもので、しかも効率のよいものを選べば、トウモロコシや大豆、ヤトファなどより単位面積あたりの油生産量はかなり大きくなる。あとはこれらを安価で抽出できるようになれば、日本からバイオ燃料を輸出することも夢ではない。単にバイオ燃料を抽出するだけではなく、オメガ3など、健康食品などに有効活用できる成分も抽出できるようになる。

しかし、夢の実現には、課題を解決する必要がある。微細藻類からバイオ燃料を生産するためには以下のような課題をクリアしなければならない。

1.高い増殖率と油脂含量の高い藻類の探索と作出
2.最適培養条件の解明 → 培養施設の設計と運転条件の策定
3.回収過程ににおける省コスト化
4.乾燥を必要としない効率的な抽出技術の開発

これらの課題をクリアすることで、マリンバイオマスタウン構想は実現に向けて動き出す。

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